ロックマンのストーリーを小説化してます。書き始めから相当の時間が経過しましたが、かっこよく言うと執筆中です。悪く言うとダラダラと駄文を吐き出してます。駄目駄目な語彙力で、文法もしっちゃかめっちゃかですが、こんなものでも感想をいただけると書くスピードが加速します。○∠\_←いもむし
時は西暦200X年。
科学の進歩により、人間は様々な工業用機械を生み出した。
工業用のロボットである。彼らの活躍により 、人間の生活水準は格段に上がった。中でも高い性能を持った人型の工業用ロボットの活躍はめまぐるしく、親しみやすい彼らと人間の関係はとても親密になっていった・・・・。
そんな中、ロボット工学の権威、ライト博士こと、トーマス・ライトがいた。今日のロボット工学社会は彼なしにはありえなかったかもしれない。彼は6体の優秀な工業用ロボットを世に送り出していた。
DRN.003 カットマン 森林伐採用に開発されたロボット。
DRN.004 ガッツマン 土地開拓用に開発されたロボット。
DRN.005 アイスマン 南極大陸探査用に開発されたロボット。冷凍倉庫の荷物の運搬作業をしていた。
DRN.006 ボンバーマン ガッツマンと同じく土地開拓用に開発されたロボット。
DRN.007 ファイアーマン 廃棄物処理場の作業をしていたロボット。
DRN.008 エレキマン 原子力エネルギーの電圧制御作業をしていたロボット。
これらのロボットはとても優秀に仕事をこなしていた。そう・・・昨日までは・・・・。
ところ変わって、ここはライト博士宅。彼は庭のある一軒家に住んでいる。
ポストもあるし、庭には花壇もある。屋根は半球形で開くようになっている。
夜にここを開いて天体観測でもするのだろうか。家の中は様々なコンピュータなどがある。どうやら研究所でもあるようだ。そんな彼は一人身なのだが、家の中から声が聞こえてくる。
???「博士〜、掃除はここをしておけばいいですか?」
黒髪でTシャツを着た少年が言う。
ライト「おお、ロック。いつもすまない。」
彼がライト博士だ。優しい顔立ちで、白い豊かな口ひげがある。
ロック「わかりました。あれ、博士。掃除機は・・?」
ライト「そこにないかの?最近少し物忘れがひどいのじゃ・・・」
彼はカットマンの前に2体のロボットを製作していた。DRN.001の家庭用お手伝いロボット「ロック」と。
???「博士!掃除機はここにおくって言ったでしょ!?ほら、トイレの裏に!」
ライト「ああ、ロールすまんね。」
DRN.002のロックの妹のような存在の家庭用ロボット、「ロール」である。
彼女は背丈はロックとあまり変わらない。黄色い髪を緑のリボンでポニーテールにしている。
ロール「全く。あんまりロボットばかり作ってると脳みそも機械になっちゃうんじゃないですか?」
ライトはロックとロールを本当の子供のようにかわいがり、仲良く(?)暮らしていた。
ロック「まぁまぁ、ロールちゃん。博士だって大変なんだし・・・」
ウィィィィィンン・・・・ロックが掃除機をかけながら言った。
家の外でも、家の中でもロボットと人間の関係は良好なようだ。ロボットが欠かせない存在になっているのがよくわかる。
テレビ「現代、お笑いロボットキングダム〜!」
その時つけっぱなしだったテレビで、お笑いのバラエティー番組が始まった。
芸人A「いやぁ〜、最近のロボットはすごいですねぇ〜。」
芸人B「だべね〜。機械だけに仕事の機会をとられてまうで〜。」
ライト・ロック・ロール「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
本当につまらない漫才だ。ネタを作ったのはどっちだ。
ロール「あはははははははははははっ!何アレ!?おもしろーい!プフッ!」
ロボットにも個性があるのがよくわかる。
ロック「ロールちゃん・・・・・ツボ?」
プッ・・・
その時。
アナウンサー「緊急ニュース速報です。」
居間のテレビのバラエティー番組が、急に深刻そうなアナウンサーの声に変わった。最近は技術の進歩で自然災害はコンピュータで予測、管理され、事故もほとんどなくなっているというのに・・・。でも・・・ほら・・・・・・
アナウンサー「工業用ロボットが暴走し、街などを破壊しています!ただいま入った情報によりますと、暴走しているこのロボットたちは・・・・・。!!・・・・・そんな・・・・・ドクターライト製作のロボットたち6体です!ロボット警察も応戦しているようですが・・・ああっ!またやられてしまいました!まったく歯が立ちません!」
ライト・ロック・ロール「・・・・・・・!??!?!」
ドドドドドドドド・・・
3人は目を疑った。テレビにはカットマンをはじめとする6体のドクターライトナンバーズとその他の工業用ロボットが街や森を破壊している映像が映し出された・・・。崩れていく町中の建物、燃やされていく木々、破壊されたロボット警察の残骸、逃げ惑う人々の悲鳴・・・。それらはこれが決して、映画や特撮やドッキリではなく、現実に起きている出来事だということを教えてくれた。
ライト「な・・なんということじゃ・・・。」
博士の悲痛な声が部屋に響く。
ロック「博士!?これはど、どういうことですか!?」
ライト「わたしにもわからん・・・。わたしのロボットには、このようなことが起こらないように何重ものプロテクトをかけ、もし仮に暴走することがあれば・・・・!」
博士は話をやめると、何かを思い出したように足早に部屋の隅にあるコンピュータに向かった。
ロック「博士?どうしたんですか?」
ロックが何やってるんだと不思議そうに聞く。
ライト「こんなことがあった時の為にカットマンたちには緊急停止システムがあるのじゃ。コレを起動させれば、すべての機能は止まるようにしてある。」
コンピュータの画面には、カットマンたち6体の構造が立体的に表示されくるくると回っている。博士がキーで何かを打ち出すと画面に「An urgent stop system(緊急停止システム)」と赤く表示された。
ロール「じゃぁ、カットマンたちは止められるんですね!?」ロックの顔は希望に輝いたが
ライト「そのはずなのだが・・・・」博士の顔には少し焦りが見える。
博士はコンピュータでシステムを起動させ始めた。
ウィィィッィィィィィィイィィィィィィィイイィン・・・・・コンピュータがうなり始める・・。そしてしばらくすると・・・・
「System error!These robots do not have this operation now because your follower does not have it.
(システムエラー!現在このロボットたちはあなたの支配下にないので、この操作はできません)」と騒がしいビープ音と共に表示された。
ライト「な・・・なんじゃ?おかしい・・・カットマンたちが緊急停止できない!!!!!」
博士の顔にはなぜこうなったのかがまったく理解できないといった焦り不安が浮かんでいる。確かにこのような事態にならないように研究してきて、それは完成したはずだった。だが・・・・
プッ・・・・・・ザー・・・ザーザザザー・・・・ザザザザザザーーーー・・・・ザザザザザザザザザーーーーーー!!!!
その時、ずっとロボットたちの暴走を映し出していたテレビの画面が切り替わり、ノイズだらけになり、けたましい音を出し始めた。
ザザザザ・・・・・・わ・・・・・・ザザザザ・・・・・・わしの・・・・・・ザザザザザ・・・・・・・ 砂嵐の隙間に人影のようなものが見える。それは亡霊のような・・・・
ロック「?・・・・なんだ?」
ザザザザ・・・・・・わしの・・・・・名は・・・・・ザザザ・・・・・ザザ・・・・ピュン・・・・・
急にノイズが消え、一人の科学者風の小老人の姿がテレビに映し出された。体を小刻みに揺らし、笑いをこらえているようだ。頭の髪は少し後退しているが、側頭部には、まだ豊かな頭髪が残っている。ライト博士ほどではないが、鼻の下に豊かなヒゲを生やしている。
ロール「・・・・・だれ?」
テレビを見ていたライトの顔色が変わった・・・。青く・・・青く・・・・
ライト「お・・・・おまえは・・・・・・まさか・・・・。」
すると小老人が何かを話し始めた。笑っている・・・・?
???「わしの名は、ドクターワイリー!天才科学者アルバート・W・ワイリーじゃ!」
自らをワイリーと名乗る科学者風の小老人はテレビの中で話し続ける。
ワイリー「聞け!わしの天才を理解しない科学者、そして愚民共!!わしは・・・・・・この世界を征服する!!!!!!フハ、フハハハハハハハハハ!!」
いつの間にか、外でのロボットたちの破壊活動がやんでいる。
ロック「な!?・・・ライト博士?!この人は誰なんですか?!」
ロックは状況がよく読みとれないようだ。無理もない。彼の人工頭脳からはこんなデータは検索できない・・・。こんな前例はない・・・。
ライト「・・・・彼の名は「アルバート・W・ワイリー」。わしの大学の同期じゃ。優秀で熱心な科学者だったのだが・・・。10年前の学会から、姿をくらましていたのだ。」
ロール「でも・・・なんで、こんなことを?」
当然疑問に思うことをロールが口にした。
その時、高笑いをしていたワイリーがまた、話し始めた。
ワイリー「どうじゃ?いつもアホのように頼りきっているロボットたちに襲われる気分は?推察のとおりロボットたちを操っているのはこのわしじゃ。手始めに工業用ロボットたちを先頭に6つの箇所を征服する!抵抗してもいいぞ?無駄じゃろうがな!!!フフフ・・・・ハーッハッハハハハアハッハ!!!」
ピュン!・・・ザーッザザザザ・・・・ザザザザ・・・ザーザザザ・・・
テレビからまたワイリーの姿が消え、ノイズだらけのテレビに戻った。すると・・・
ドゴッ!・・・・バン!ズドドドドッドオドドドド!!!
活動を一時停止していたロボットたちがまた破壊活動を再開した。
ロック「博士!?どうするんですか?!このままじゃ・・・街が・・・・」
ライト博士は何か考え込んでいるようだった。すると急にドアのほうに向かい始めた。
ロール「博士?!どこにいくんですか?博士!?」
ライト博士は無言で家から出て行った・・・。ロックたちもそれを追った。すると・・・
ライト「ワイリー!!!!やめるんじゃ!お前が本当に憎いのは、私のはず!!!」
なんと、暴走するロボットたちの前にたち、叫び始めた!すると、そのうちの1体が博士に襲い掛かった!
ロック・ロール「ライト博士!!!!!!!」
改造されたロボットの銃から放たれる弾丸・・・・。それは高速で博士に向かい、ゆっくりと博士の体に食い込んで・・・・
いってはいなかった。
博士は向かいの道路の端に寝転がっていた。弾丸は博士ではなく、博士を突き飛ばしたロックの胸を貫いていた。ロックが前のめりにゆっくりと倒れこむ・・・。
ライト・ロール「・・・・・・・ロック?!」
博士とロールの2人はロックにすぐさま駆け寄った。ロックは2人にてを伸ばす・・・。
ロック「・ラ・・・イト・・・博・・・・士・・ロー・・・ル・・・・逃・・・・げて・・・・・」
ロックの手がぱたりとうなだれた。
ロール「ロッ・・・・・ク・・・?・・・・死んじゃやだよ!ねぇ?!」
ロールの目から涙が零れ落ちる。
ライト「・・・クッ・・・なんてことじゃ・・・」
そんな彼らに、またロボットたちがじりじりと近づいてくる・・・。
ライト「こ・・・・このままでは・・・」
ドン!
ロボットが発射した爆弾がライトたちに飛んでくる!
ライト「むっ・・・!」
ロール「きゃぁぁぁぁぁ!・・・・」
博士はロックとロールをを強く抱きしめた。
ドワァォン!ガラガラガラ・・・
爆弾は少し狙いをはずれ、後ろのビルに当たった。崩れ落ちるビル・・・。それに下敷きになるライトたち・・・・。
ロボットたちは、もう満足したのか、その場を去っていった・・・。
・・・・ガラ・・・・・・ 生者のいなくなったはずの街にガラクタの動く音・・・・
ライト「・・・・・(・・・なんじゃ・・・生きている?・・・・・・)」
ガラァン!
急に視界が明るくなった。そこには、ぼろぼろになったロックが立っていた。
ライト・ロール「!!!ロック!」
ロックは何も言わず、力尽きたように倒れた。
ロール「ロック・・・・・・」 悲痛な泣きそうな顔でうつむくロール・・・。
ライト「2度も助けられてしまった・・・・・・・・」 博士もまた悲痛な顔をしている・・・。
うなだれる2人・・・・。しかし、
ライト「・・・・・ロール!!!」
博士が急に叫んだ。
ライト「ロックを研究所に運ぶんじゃ!死なすわけにはいかん!」
ロールは顔をあげて、力強く言った。
ロール「・・・はい!」
2人は傷ついたロックを研究所に運んだ。そして研究室に運び入れた。
ロール「博士!ロックは、死にませんよね!!!?」
博士は修理の準備を始め、メインコンピュータを起動させながら言った。
ライト「わからん・・・・いや・・・・・・・絶対に死なせはしない。助けるのじゃ。」
研究室の空気が変わった。
ライト博士は天才だった。すばやいプログラミング。神業の溶接。配線。しかし、その腕をもってしても、家庭用ロボット「ロック」が受けた傷を治すのは、至難だった。動力炉・・・・基盤はひどく損傷していた・・・。彼の電子頭脳だけが無事だったのが、唯一の幸運だった。
それから24時間は研究室の明かりが消えることはなかった。
そして・・・・次の日の朝・・・・。
ライト「・・・・終わった・・・」
ロックの修理が終わった・・・。しかし、すぐに動けるような状態ではない。
研究室の修理台に接続されたままだ。ロールは看病・・・・ではないが、ずっと付き添った疲れで眠っている。
ライト「明日にはどうにか動けるようになるだろう・・・・。しかし・・・・ワイリー・・・なんてことを・・・」
すると何か小さな音が聞こえてきた。
ライト「・・・・?」
耳を澄ますと、ロックが何かを話している。
ロック「・・・は・・・・かせ・・・・」
ライト「なんじゃ?」
ロック「・・・・・・ボクを・・・・カットマンたちを止められるように・・・・・・戦う力をください・・・・」
ライト「なんじゃと?!」
ロックはしっかりとした口調で話し始めた。
ロック「・・・・カットマンたちは操られてるんですよね・・・?なら・・・・ボクは兄弟だから・・・・ボクが・・・・止めたいんです・・・いや・・・止めなきゃダメなんです・・・。」
ロックの目からは弱弱しいようで力強い決意が読み取れる。
ライト「・・・・・・だめじゃ・・・・・お前を戦いに出すなど・・・・だめじゃ・・・・だめじゃ!」
ライト博士はそういうと部屋から出て行った・・・。彼の背中からは困惑と哀愁の気配が漂っていた。
博士は歩きながら考えていた。今、どうするべきなのかを・・・。
ライト(ならぬ・・・・・ロックを戦いに出すなど・・・・・しかし・・・・・・)
彼は考えた。本当に考えた。彼はロボット研究を始めたときのことを思い出していた。
昔の天才たちの瞑想もここまで深くなかったかもしれない。
彼は立ち上がった。彼の目にも、決意が読み取れる。時計を見る。すると驚いたことにそれほど時間はたっていない。
ライト「まだ・・・間に合うだろうか・・・・」
博士はロックのいる部屋へ向かう。
博士は出て行ってしまった。ロックは少し悲しかった。博士なら。分かってくれると思っていた。ロックが本当は戦いたくはないこと。でも、ロックがしなくてはいけないこと。
ロック「博士・・・・・・それでも僕が・・・・しなきゃ・・・・」ゆっくりとまぶたが落ちる。ロックはロボットだが眠ることができる。ここ最近の疲れだろう。
・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
バタン!
ライト「ロック!」
ライト博士が戸を勢いよく開ける音で、ロックは目を覚ました。
ロック「・・・・・・・なんですか?」
ロックは少し寝ぼけ気味で答えた。
ライト「・・・・・・・・わたしは・・・・・お前を戦いに出したくはない・・・・」
ロック「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
ライト「・・・・・・しかし・・・・・ワイリーのしていることは許されることではない・・・・・お前の決意も分かった・・・・・・・」
ロック「・・・・ライト博士?」
ライト博士の手は震えている。
ライト「・・・・・・・・・絶対に生きて帰ってくるのだぞ?」
ロック「・・はい!」
また研究室に明かりが灯る。しかし今回の明かりは、消え入る蝋燭の、祈るような光るではなく、小さな強い電球のような希望の光。世界にともったひとつの小さな希望のようだった。
ワイリー博士は不幸せで、幸せだった。
彼に友人はいない。しかし彼にはロボットがいる。彼はロボットをとても愛している。
彼に名誉は無い。しかし彼には信念がある。いや怨念という方が正しい。
おや、だれか入ってきたようだ、どうやらワイリー博士がモニターを凝視している。モニターにはロボットたちが軍と戦っている様子が表示されている。またコンピュータの画面には世界8ヶ所をピックアップしたデータが表示されていて、Strategy success(作戦成功)と表示されている。・・・・・・・・・・・どうやら・・・・・彼の世界征服計画は、ほぼ成功し終了しているようだ・・・・。
ワイリー「フフフ・・・・・ハーッハッハッハ!この調子で行けば、あと数日で目標としていた世界征服が完成する!もう国連本部とV.S.Aさえ潰してしまえば、もうすぐじゃい。」
やはり・・・あと数日で世界征服が完成するそうだ・・・・。国連軍もそう長くは持たないだろう・・・・・。
するとワイリー博士はポケットから 「Dr.W」と書かれたチップを取り出した。
ワイリー「しかし、やはり、わしは天才じゃ!ライトのヤツのロボットの回路を、このワイリーチップで乗っ取る。そしてロボットに掛けられている、プロテクトを外し内部の基盤の情報を書き換える・・・・・・・・・。」
なんだか小難しいことを言っているようだが、どうやらあのチップでロボットたちを操っているようだ。
ワイリー「全ては順調じゃ・・・・・・・・これで・・・・・・・・・・・・」
博士は気づかなかった。その小さな音に。モニターから発せられたその小さな音に。博士の計画、自信を
足元から崩壊させる・・・・・・
ワイリー「さて・・・風呂にでも入るとするかのう」
その音に。
ワイリーは部屋から出て行った。モニターにはワイリーのロボットたちが何者かに倒されていく様子が・・・映し出されていた。
時間は少し戻る。ライトがロックの戦闘用ロボットへの改造手術を終えたようだ・・・。
ライト博士の額には汗が浮かんでいる。この汗は単に研究室や手術の時に出る熱のせいなのか、それとも愛するわが子のようなロックを戦場に送り出す緊張から来るものなのかは本人さえ知らない。
ライト「・・・よしっ、終了じゃ。どうじゃ?ロック、感覚は?」
ロック「・・ふぁ・・・おはようございます。博士」
ロックがゆっくりと手術台から起き上がる。彼の姿はロック・・・と呼ばれていた頃とはずいぶん違った。両手両足は青いアーマーに包まれている。彼が台から降りる。
ロック「・・・・なんだか、ずいぶん体が軽くなった気がします。」
ライト「そうじゃろう・・・・・まぁ、何といっても戦闘向けの体・・・・・じゃからな」
ライト博士の表情が少しだけ険しくなる。
ロック「博士・・・僕は大丈夫です!カットマンたちを止めるだけですから。」
ライト「わかっておる・・・・・。」
台の陰から物音がする。
ロック・ライト「・・・・ん?」
すると台の陰から、ロールが出てきた。
ロック「あ・・・ロールちゃん・・・」
ロール「・・・・何よ」
どうやらとても不機嫌のようだ・・・。ロールにはロックがカットマンたちを止めに行く・・・・つまり、戦いに行くことを伝えていなかった。が、隠し通せることでもない。やはり手術に気づかれ、話を盗み聞きし、感づいてしまったようだ。
ロール「・・・・・戦いに行くの?」ロールが少し問い詰めるような口調で聞く。
ロック「・・・・・うん・」ロックが小さく答える。
ロール「何で?」
ロック「・・・・カットマンたちは・・・・僕らの弟だから・・・・僕が止めなきゃいけないんだ・・・。」
ロール「・・・ふぅん・・・そっか」
ロック「うん。」
ロール「じゃ・・・・・・・・・死なないようにね・・・死んじゃダメだよ・・・・うっ・・・・」
ロールは少し泣き出してしまったようだ。ロールも争いごとは嫌いだ。目から涙がこぼれることはないが・・・。そうしてしゃがみこむ。ロックが近寄る。
ロック「大丈夫だよ・・カットマンたちを止めるだけだから」
ロール「・・・うん」
ロック「じゃ・・・・いってくるよ」
ロール「・・・うん・・・・・・」
ロックがロールから離れる。そうしてそばで見守っていた博士に近づく。
ロック「それでは博士・・・・・・・僕・・・いきます。」
ライト「・・・がんばってな・・・・」
ロック「はいっ!」
ロックはヘルメットをかぶり、研究所を飛び出した。ヘルメットは青いヘルメット。深い青に水色のパーツのついたヘルメット・・・。
振り向くと、研究所の入り口でライト博士が手を振っている。ロールも博士の後ろから手を振っている。大きく手を振っている。ロールが何か言ったようだが、音としてロックの耳には届いていなかった。しかし、ロックにはロールが何といったか分かっていた。・・・・・がんばってね・・・生きて・・・・・帰ってきてね・・・と。
研究所を後にして暫く、ロックは走った。ロックの胸の中には悲しみがあった。しかし、これで皆がこれ以上傷つくところを見なくていいんだ・・・。という、希望もちょっぴりあった・・・。
ロック・・・・・・・・・・・・・彼は後に・・・・・・・世界を救う英雄となり、伝説となる。一科学者が作った家庭用ロボットが、一科学者のとてつもなく大きな悪意に立ち向かう。それらの心は「ロックマン」という名で語り続けられてゆく・・・・。
ロックが出発して数時間後の現在・・・。
モニターは相変わらず破壊された街や家、ロボット警察の残骸を映していた。しかし、ひとつだけロボットはロボットの残骸でも、「Dr.W」と書かれた残骸を映しているモニターがあった。さきほど、ワイリーがロボットの救援信号に気づかなかったあのモニターである。
おや・・・噂をすれば何とやら。ワイリーがやっと風呂からあがって来たようだ・・・。計画がうまくいっているからか多少ご機嫌なようだが・・・
ワイリー「ふん・・・いい湯じゃった。ワシが開発した「湯沸しロボW-069」の調子は上々じゃな・・・。やはりワシは天才・・・・・ん?・・・・」
ワイリーは気づいた。
ワイリー「何じゃ!?これは!」
モニターのひとつに映し出されたワイリーたちのロボットの残骸。今となっては手遅れな救援信号。軍隊と戦っても互角以上に戦えるはずワイリーのロボットたち・・・・・・。これは有り得ない状況だった・・・。
ワイリー「・・・・ありえん・・・・・何かの間違いだ・・・・・国連が新兵器でも投入したのか・・・・?・・」ワイリーは状況が飲み込めずに混乱しながら、モニターを見た。
別のモニターにはロボットたちが、最後に通信してきたロボットの送ってきた最後の映像データが映し出された。
青いロボット。
ハァ・・・・・・・・ハァ・・・・・・・・・・・・。
ロックは立ち尽くしていた。
博士宅を飛び出して、南に十数キロ・・・。工事現場で、ロボットの残骸を調査していた・・・。
ロック「・・・ひどい・・・。何もかもメチャメチャだ・・・・・・・。」
確かに破壊されたロボットたちは、メチャメチャだった。工事現場とはいっても、警察のポリスロボの残骸も多くある。ワイリーは多くの作業用ロボットを操っているため、作業用ロボットとポリスロボの残骸がここでは目立つ。
ロック「早く・・・・・・やめさせなきゃ・・・・・カットマン・・・」
ロックは正義感が強い。だから兄弟たちがこんなことを・・・・操られてるとはいえ、していること、世界の人々が傷つけられているのを黙って見過ごすことはできないのだ。
ロック「・・・カットマンは確か、この先の森林で働いていたはずだけど・・・・ん?」
確かにカットマンは伐採用の作業用ロボットだ。しかし、ロックが見つめる先にあるのは・・・・・・彼の頭脳内に保存されている「森林」と少し違った。
ロック「あれは・・・・・・なんだろう・・・・・?基地?・・・・・かな」
森林だった場所の一部はワイリーに操られたロボットたちでワイリー基地に改造されていた。元々、道路工事などに使うロボットたちもいたので容易いことだったのだろう。
遠くから音が聞こえた。何か飛んでくる・・・・。丸い形の何かが・・・・・・
それはなかなかの速度でロックに一直線に飛び込んでくる。
ロック「!」
ロックはそれが何かに気づくと、姿勢を低くし3mほど横っ跳びした。
ロック「(前とは全然体の身軽さが違う・・・・!)」
しかし・・・それは「それ」ではなく「それら」だった。
それらの内ひとつはロックの4m手前で90度ほど角度を変え、ロックに突っ込んできた!
ロック「ぐっ!」
続いて、その他の2台もロックに激突してくる。
ロック「・・・ブンビーヘリだ!!!」
ブンビーヘリは偵察用のロボットだ。
特に改造が加えられているわけではなさそうで、武器を装備しているわけでもないが、集団でぶつかられるとダメージはある。
ブンビーヘリたちは旋回し、もう一度ロックマンに向かってきた。
次の瞬間、ブンビーヘリたちは、上部のヘリとカメラアイを失い地に落ちていた。
ロックの手から、光線状のものが飛び出し、ヘリを撃ち抜いていた。
ロックの手首が引っ込み、銃口が飛び出して、少しその銃口からは白煙が昇っている。
ロック「ロックバスター・・・・・・か」
その武器の名前はロックバスター。太陽光線を圧縮し、超高温のビームとして発射する。手がバスターと切り替わるのに1/1000秒しかかからない。
それはロックが戦闘用ロボット「ロックマン」に生まれ変わったことを何よりも象徴していた。
ロック「立ち止まってもいられない・・・・進もう。」
ロックは自分が戦闘用ロボットになったことを全身で感じながら、元森林の基地へ走っていった。
ロックは何度かブンビーヘリに出くわしたが、どうにか撃退し、森の奥へと進んでいった。
すると前方にはしごが見えた。森の中に大きな建物のようなものがあり、はしごがついている。なかなかの高さだ。30m近くはあるだろう。
ロック「高い建物だなぁ・・・」
そう呟きながら、ロックははしごに手をかけ登り始める。
ふと上を見上げると壁にいくつか丸っこい物が付いている。
ロック「・・・?何だろう?あれ?」
ロックは多少警戒しながら、はしごを上り続ける・・・。
すると丸っこいものがパカッと開いて、砲台が飛び出した。
しかも、ロックはしたから見ていたから気づかなかったが、砲台は壁に一直線上に複数設置されていた。
それらが、一斉にロックに向けてエネルギー弾を発射する。
ロックは気づいていないようだった。
いや、ロックなら気づいていなかっただろう。しかし彼はもうすでにロックマンであることを忘れてはいけない。
ロックは弾幕の隙間を縫うように走りぬけながら、はしごから飛び降りた。
ロック「危なかった〜。弾を撃つときの音が小さくて気づくのに時間がかかったよ・・・」
と、言いながらロックは頭に指を当て、目を瞑り始める。
・・・・・・・・・・・・
ロック「・・・・・ブラスター。進入者撃退用のロボットか。」
ロックは人工頭脳内のデータベースにアクセスし敵のデータを呼び出していたようだ。
どうやらブラスターの画像は開いた状態のものしか記憶されてなかったので、わからなかったようだ。
その間にもブラスターは規則的に砲撃を繰り返している。どうやら一度侵入者を発見すると、最後に姿を確認したところへ
砲撃を繰り返すようだ。
ロック「よし・・・・・・今だ!」
ロックはタイミングを計ってはしごに飛び移る。一気に上りきってしまうつもりだ。
しかし、そう上手くはいかなかった。避けきれなかった弾のひとつがロックに直撃する。
ボン!
少しロックの体から煙が上がる。
が、次の瞬間ロックははしごを上りきっていた。
ロック「危なかったぁ・・・・・・」
そういってロックはヘルメットを外す。
ロック「少し・・・焦げちゃったな。でもヘルメットで良かった。」
またロックはヘルメットを被る。辺りを見回すと南のほうに森が開けている場所がある。
ロックは南に向かって走り出した。
途中、地面にネジのようなものが生えていた。突如、エネルギー弾を発射してきたが、こちらに関してはロックは余裕で回避することができた。
ネジの名前はスクリュードライバー。元々は家事のときに水をまくスプリンクラーだったが、ワイリーに改造されたようだ。
ロックバスターで撃ちぬき、ロックは突き進む。
ロックはそこまで気に留めていなかったが周りの景色が多少変化していた。
外から見てわかるように。森ではなく基地の中をロックは走っていた。
ロック自身もどこに進めばいいのかは、ハッキリとはわからなかったが、さっき破壊したロボットの中に取り付けてあったチップ。
それでロックは確信した。
「Dr.W」
チップにはそう刻印されていた。ここはワイリーの基地だ。
ロック「!!!?」
ロックの後ろのシャッターが音を立てて閉まった。よく見るとこの部屋は行き止まりだ。
ロック「扉を通っていたことに気づかなかった・・・」
と・・・・・
部屋の奥に誰かいる・・・
ロック「カットマン?!」
カットマンは、こちらを見据えている。まっすぐと。その目は・・・・濁っている?
カット「侵入者は排除する。死ねっ!」
カットマンは頭についているローリングカッターを投げつけてきた。
それは弧を描いてロックに向かってくる。それはロックはギリギリで避ける。
ロック「うわっ!?・・・や・・・やめるんだ!カットマン!ロックだよ!いや・・・・僕、ロックマンだよ!?カットマンたちを止めにきたんだ!」
カットマンの動きが止まる。
カット「ロックマン?・・・・・・ライトのロボット・・・・・・・・操られてるのか?・・・・僕が助けてやるよ・・・・・!」
ロック「カットマン?!」
カットマンは再び攻撃を開始した。
ロックは少し残念だった。やはり戦いを好まないロックの心が痛かった。兄弟たちとは戦いたくは・・・ない。
ロックは部屋の端から走り出しながら、考えた・・・
ロック「(やっぱり倒すしかないのかな・・・・・)」
カット「チョキ!チョキ!チョキ!ローリングカッタァーァア!!」
カットマンがそう叫ぶと、ローリングカッターがロックマンに向けて飛んできた。
カットマンには迷いはない。ロックマンを倒す。その気でいる。
ロック「うわっ!」
ロックはそれを間一髪のところでしゃがんで回避した。
そしてロックには分かった。カットマンは僕を倒す気でいる。
直してあげなきゃ。助けてあげなきゃ。兄弟だから。同じライト博士に作られた兄弟だから。
こんなことはやめさせなきゃ。
返ってきたカッターをつかんでカットマンが叫ぶ。
カット「そんなんで何しにきたんだよっ!ロックマン!!!」
ロック「!」
ロックは決意した。こんなことをやめさせるために・・・カットマンたちを倒す!
部屋の奥からカットマンが向かってくる。右手にはローリングカッター。
カッターがロックマンに向かって振り下ろされる。
カット「!?」
ロックはそれを左に回りながら、身をかわすと回転の力を利用しながら、
渾身の右ストレートをカットマンの顔にお見舞いした。
ロック「てやあああああああああ!!!!!」
そのまま吹き飛んだカットマンに向けて
ロックバスター
銃口はしっかりとカットマンの胸を捕らえていた。
カット「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!」
・・・・・
カット「ロック・・・・・・・・・・こっちこいよ・・・・・」
煙が晴れた。カットマンは倒れていた。ロックマンはカットマンを抱きかかえていた。
ロックマンは泣きそうだった。決意はした。しかし兄弟を一度手にかけてしまったという事実は変わらないのだ。
カット「・・・・ロックありがとう。やっと目が覚めたぜ・・・・。変なロボットが急に襲ってきて・・・・・目が覚めたら・・・訳わかんなくなってて・・・・」
予備電源のおかげで動力炉が破壊されても短時間なら機能できる・・・・。
ロック「ゴメン・・・・ごめんね・・・・・・・・・こうするしかなかったんだ・・・・・・・・・・倒すしかなかったんだ・・・・」
カット「大げさだな・・・・・ライト博士に直してもらえばいいさ・・・・・あ・・・・・でも・・・・あわせる顔ないなぁ・・・・・・」
操られていたとはいえ、破壊活動をしていたことに違いは無い。
ロック「皆助けるから!他の皆も助けるから!」
カット「そうだね・・・・・・・・・たぶん、ファイアーマンが廃棄物処理場にいると思う・・・・・・・・・」
カット「・・・・・ロック、俺のローリングカッターを持ってけよ。武器チップを装備すれば使えるんじゃないか・・・・後は頼んだ・・・よ」
カットマンをそういうと倒れた。
ロックは立ち上がった。目には新たな決意の色が浮かんでいた。
ロック「・・・・・・・皆今行くよ。」
ロックはカットマンから武器チップを取り出し、バスターに装備した。
カットマンをライト研究所に転送すると、歩き始めた。カットを倒したときに新しい道が開いていたのだ。
ロックは南東へ向かった。
カットマンが倒されたことはワイリー博士にすぐに伝わった。
ワイリーはカットマン達の電子頭脳と基盤にワイリーチップを取り付け操っていた。
カットマンは動力炉を撃ち抜かれたことで、チップへのエネルギー供給が絶たれ、正気に戻ったのだ。
予備電源ではチップへのエネルギー供給は十分に行えない。そのような状況下。つまりカットマンたちの機能が停止すると、ワイリーに信号が送られるようにプログラムされていたのだ。
ところ変わって・・・ワイリー研究所。
ワイリー研究所のモニターにはカットマンが最後に送ってきた映像が映し出されていた。
青いボディに青いヘルメットのロボット。
最初は動揺していたワイリーだったが、送られてきた情報を見ていくたびに状況が理解できたようだった。
ワイリー「・・・・ロックマンか・・・・・・・・ライトのロボット・・・・・ライトめまたワシの邪魔をするのか・・・・・・・・・・・・・・・」
ワイリー「じゃが・・・・!ワシにはまだ5体もロボットが残っておる・・・ワイリー軍団が負けるはずがない・・・・ロックマンに勝つことでワシがライトより優れていることを証明・・・・・するのじゃぁ!・・・・・・・・!!!」
ワイリーは一人でそう強く呟くと、5体のロボットたちが占拠している基地へ指令を送り始めた。
「青いロボットを倒せ」と。
ワイリーとロックマンの長い長い戦いが激化する・・・・・・・。
そのころ南東に進んだロックマンは森を抜け町のはずれを走っていた。目指すは廃棄物処理場だ・・・・・・そしてロックはライト博士と通信をしていた。
が・・・
ロック「・・・・・ライト博士・・・・?ライト博士・・・・・応答願います・・・・・」
研究所「・・・・・・・・・・・ザー・・・・・・ザザ・・・・・・・」
ロック「・・・・・ダメだ・・・・・さっきから何度やってもこの調子だ・・・・何かあったのかな・・・・・・・・・さっきはカットマンを転送できたのに・・・」
ロック「おーい、ライト博士ー・・・・・ロールちゃ〜ん・・・?」
さっきからずっとこの調子のようだ・・・。通信機能が上手く機能していないようだ・・・。座標軸がずれているのかもしれない。
そんなことをやっていると、4階建ての団地を抜け、大きな煙突の見える廃棄物処理場が見えてきた。
ロック「あ・・・見えてきた。廃棄物処理場だ。ファイアーマンがいるんだな・・・・きっとあそこに・・・。」
ロックは右こぶしを握り締める。
ロック「よし!」
ロックはバスターで処理場の扉を破壊し、中に侵入した。
入り口付近は薄暗い。廊下の照明が落ちているようだ。少し長い廊下の奥のほうに明かりが見える。
ロック「明かりのほうに行ってみよう。ファイヤーマンかもしれない。」
ロックは明かりに近づくにつれ異変に気が付いた。
ロック「熱い・・・・・・・?」
熱いのだ。暑いのではなく熱い。
ロックはロボットだが、体の各所に取り付けられたセンサーとカメラアイのおかげで温度が分かる。
この温度は異常だ。通常時は建物内の温度は20度も無い。・・・そんなことを考えているとロックは廊下を抜けた。
そこは耐熱性の高いガラスで焼却炉内としきられている、管理室だ。
ロック「うわっ!」
通常、ゴミ処分場の焼却炉は800℃ほどで保たれている。
しかし。
モニターに映し出されている、温度は2000℃。
基本的に、焼却炉はコンピュータで管理されている。
コンピュータ。
言うまでも無い、そのコンピュータを管理しているのはファイアーマンだ。
処理場内の異常はファイアーマンの異常をそのまま意味する。
ロック「とにかく、焼却炉の温度を下げないと・・・」
焼却炉が異常な高温のままだと、耐火材が耐え切れず、炎上する可能性も非常に高い。
ガラスもいつまでもつかはわからない。
早く焼却炉内の温度を下げることが先決だった。
数分後、ロックはなんとかコンピュータにアクセスし、焼却炉内の温度を下げることに成功する。
ライト博士が事前に、プログラムデータの一部をロックにインストールしていたことが幸いしたようだ。
ロック「これで・・・いいかな。とりあえずは安全だ。そういえば、ファイアーマンはどうしたのかな?」
ロックがそう呟くと、第四処理場内部の温度が急上昇した。
ロックが驚くのと同時に、第四処理場と管理室を区切っているガラスに火柱がぶつかった。
ガラスは、ものの数秒で真っ赤に熱され、大きな穴が開き、
そこから何かが管理室に飛び込んでくる。
その「何か」の片腕から炎が飛び出し、ロックに一直線に向かってくる。
ロック「!!!」
油断していたロックは、それをモロに食らってしまう。
ロック「うわああああああああああ・・・」
ロックの装甲は耐熱性が高くは無い。表面が少し融けてしまった。
ロック「ファ・・・ファイアーマン!」
ファイアーマン「ロックマン!!!邪魔するのならお前も燃やす!!!」
あまり広いとはいえない管理室の中で、二人の兄弟は対峙した。
それは誰が・・・誰が望んだことなのだろうか。
ファイアーマンが、大きく右手を振りかぶると頭に燃えていた火がいっそう大きくなる。
ファイアーマンは廃棄物処理場の管理をしていたロボット。
彼は2000℃から3000℃の炎を操る。言うまでもなくロックマンに耐えられる温度ではない。
ロック「くっ」
ファイアーマンの右手から放たれた火炎をロックマンは、しゃがんでかわし、低い姿勢のまま間合いをつめようとする。
しかし、ロックがファイアーマンとの間合いを詰めるより早く、ファイアーマンは第二波を放ってきた。
いや、違う。彼の左腕も火炎放射器に変形し、両腕から炎を放出している。
ファイアーマン「ファイァァァァァァァストオオオオオム!!!」
ファイアーマンの両腕から放たれた炎は、混ざり合い、一つの大きな火炎と化しロックマンに襲いかかる。
ロックはわずかな間に近くにあった金属製の椅子を手に取り、盾とした。
ファイアーマン「そんなもの、役に立たないぞ!」
ロック「わかってるさっ!」
そう言うと、ロックマンは椅子をファイアーマンに向かって投げつけた。
ロック「てやぁぁっ」
ファイアーマン「そんなもん、無駄だっ!」
ファイアーストームでみるみるうちに、椅子は真っ赤に熱され、ファイアーマンの足元に落ちた。
次の瞬間。
バタン
ファイアーマンは前のめりに倒れた。
いや、倒れるファイアーマンの体を灰色のロックマンが支えていた。
ファイアーマン「クッソ・・・・・・何が起きた・・」
そして次の瞬間ファイアーマンのシステムはダウンした。
ロック「・・・ごめん」
ロックマンは椅子にファイアーマンの注意が向いている隙に、間合いを一気に詰め
ファイアーマンの膝と首元にあるケーブルを切断した。
ローリングカッターだ。ロックマンはカットマンの力を借りたことになる。
熱に強い設計のファイアーマンはバスターの効果がイマイチだったのだ。
ロック「・・・ファイアーマンを送れるかな・・・」
ロックはヘルメットに手を当てライト博士と通信を開始しようとした。
するとその手を何者かにつかまれた。
ロック「?」
ファイアーマン「待てよ・・・。俺たちには予備電源があるのを忘れてたのか」
ロック「ファイアーマン!」
ロックの顔が少し明るくなり、ファイアーマンは続ける。
ファイアーマン「なんか最近調子が悪かったんだ・・・前回のメンテナンスからだな・・・・・そして、一昨日頭の中で声がしたと思ったら・・・・・・お前に倒されてたわけだ・・・クソッ・・俺のチップも持ってけよ・・・・・・」
そこまで、言うとファイアーマンはもう一度倒れた。予備電源も落ちたらしい。
ロックは、少し気落ちした様子でファイアーマンの基盤からチップを取り出し、装備すると、ライト博士にもう一度連絡を取り始める・・・。
同じ頃、ライト研究所ではカットマンの修理が行われていた。
ライト博士が通信に応対できなかったのはこのためだ。ロールも博士を手伝っていた。
カットマンは台の上で寝かされ、素人目には分からない、鋏やバーナーのような工具で修理されている。
ライト博士の表情は複雑だった。
ロックの修理や改造を行っていたときのように、悲しみや希望に満ち溢れているわけでは無かった。
ライト「・・・・・これでよかったのか・・・」
ロール「博士・・・・」
二人の修理の速度が少し遅くなる。
確かにロックが勝っても負けても、博士はここで、兄弟たちを修理することになる。
兄弟たちの殺し合い。
それが博士には悲しく、むなしかった。
ライト「元々・・・私が・・・」
そう言いながら、博士は開いていたカットマンの胸部の蓋を閉じる。
修理はロックの攻撃が皮肉にも、迷いが無く的確だったため多少、早く済んだ。時間にして3時間というところだろう。博士は続ける。
ライト「・・・心のあるロボットを・・・作ったのが・・・・」
ロール「ライト博士」
博士の弱々しいしい声はロールの力強い声でさえぎられた。
ロール「私は博士やロックと楽しく過ごせて幸せです。だからライト博士に感謝しています」
ロールの言葉は短かかったが、博士の心中の迷いをなくしてしまうものだったと信じたい。
博士は昔から、心を持つロボットを9体生み出してしまったことに対し、自問自答していた・・・・。
しかし、今回の事件はもちろん彼、ライト博士のせいではない。きっとそうに違いない。